Q10. 規格の導入にはどの程度の業務量が必要となりますか。 他

A10.

(1) 規格の導入にはどの程度の業務量が必要となりますか。

ISO/JISのマネジメントシステム規格は“文書化”と“記録”が重要な要素です。規格に準拠した「社内規程」を作成するには相当量の準備業務が必要です。特に、“要求事項”の規格(ISO 9001/JIS Q 9001やISO 14001/JIS Q 14001など)は、要求項目も多く、数値目標やプロセスなどの作成準備の業務量は増大します。それに比べると“指針”の規格は“要求事項”規格より作成の業務量は少ないといえます。
お客様対応部門だけで作成すると日々の業務に追加されることになり、作成期間は業務量が上乗せとなりますが、社内の品質保証部門等、ISO 9001/JIS Q 9001やISO 14001/JIS Q 14001を担当されている部門の協力が得られると、負担は軽減されます。
文書化に関しては、ACAPの「ISO 10002/JIS Q 10002に準拠したお客様対応/苦情対応マネジメントシステム構築講座 社内規程文書化コース」の受講をお勧めします。

(2) ISOは高額な費用が掛かると聞きましたが、どうですか。

ISOやJISのマネジメントシステム規格の導入においては、一般的に「認証」や「更新審査」等にかかる費用が高額となり、相当な経費が掛かると思われています。先のQ8の説明の通り、ISO 9001/JIS Q 9001やISO 14001/JIS Q 14001等の適合性評価においても、第一に、自己評価し自己適合宣言することを示しています。しかし、日本では営利企業である認証機関に審査などを依頼し、高額な認証費用等を支払い、「認証」を取得するケースが多く、ISOはお金が掛かるとの認識が一般的です。
ISO 10002:2014/JIS Q 10002:2015及びISO 10002:2018/JIS Q 10002:2019の改正で、旧規格に記述されていた「この規格は、認証又は契約の目的での使用を意図したものではない」が削除されました。ACAPは従来どおり、規格への適合性の表明には「自己適合宣言」することを推奨しています。このため、基本的には外部に支払う費用は発生しませんが、「自己適合宣言」の支援文書として、規格への適合性評価と「第三者意見書」の発行を外部機関に依頼する場合の費用は発生することになります。
ACAPではISO 10002/JIS Q 10002の適合性評価「第三者意見書」発行の事業を行っていますのでご相談ください。

(3) 「自己適合宣言」することで対外的な負担が増えますか。

自己適合宣言したACAP会員企業からは、宣言後の対外的な負担が増加したとの情報はありません。

(4) 宣言後の業務にどのような変化がありますか。

ISO 10002/JIS Q 10002の自己適合宣言後においてお客様対応部門の窓口担当者の業務量はほとんど変わりません。お客様からのご意見・苦情を単なる情報として処理するだけではなく、「開発業務の品質保証の重要なプロセスや宣伝・広報業務のチェック」、「商品・サービスのより早い改善、品質の向上」に活用、「再発防止・未然防止活動」等につなげる業務です。全社的活動としてお客様の満足向上を目指した苦情対応のレベルを上げていくために、日常のマネジメントサイクルを回す上で必要かつ重要な業務です。

【解説】

  • 準備業務
    ISO 10002/JIS Q 10002の規格に従い「文書と記録」が必要です。組織的なお客様対応業務を円滑かつ継続的に運営するための「お客様対応/苦情対応基本規程」、「苦情対応基準書」、各作業の「マニュアル」、「記録のための帳票やシステム」などです。
  • 宣言後の業務
    上記業務のメンテナンスを含め、個別案件の管理業務、苦情対応プロセスの監視(モニタリング)、教育・訓練の管理、満足度調査や内部監査、さらにはマネジメントレビューへの支援等で、管理者が行う業務が増加することになります。

本規格は、お客様対応部門だけでなく、全社的なお客様対応業務が円滑に運用されるために作られています。この規格の最終目的は、お客様の信頼を得て、顧客重視がその会社の風土となり、文化となることです。現実にお客様対応をしながら、新たな仕組みを作っていくことは大変なことではありますが、「作業量が増えるから導入しない」といった意識でなく、自社のブランド価値の向上を目指し、どうすれば効率的にできるかを考え、ぜひ「自己適合宣言」を行うようご検討ください。