カスタマーハラスメント対策特集

ACAPはカスタマーハラスメント対策を考える上で以下3点を前提としています。

  1. 消費者には「消費者の権利」があり、事業者には「責務」が定められています。
  2. 多くは善良な消費者であり、事業者にはその声を商品・サービスの改善、開発さらには 経営に活かすことが求められています。
  3. 事業者としては、初期対応が重要であり、安易にカスタマーハラスメントと決めつけないことが大事です。

一方、不当要求や行き過ぎた行為が行われ、働く環境が害される恐れがある場合、組織としての対応が必要となります。
お客様と従業員とは対等の関係にあります。お客様の尊厳を尊重するとともに、従業員の尊厳を主張することが求められています。
お客様対応は一人で行うことがあっても、難しいお客様に対しては組織で対応します。従業員を決して一人にしてはいけません。そのためにも対応方針を具体的に掲げ、様々なケースを想定した体制づくりが大事です。
このページでは、カスタマーハラスメント対策の取り組み方を正しく知って、働きやすい環境をつくるために支援を行います。

カスタマーハラスメント対策に関するコラム (ACAP専務理事 齊木 茂人) 

長時間対応、暴言などカスタマーハラスメント(以下カスハラ)が社会問題となっています。2023年秋に労災認定の基準に、カスハラが追加となりました。厚生労働省では事業者に対してカスハラ対策を措置義務とする動きが出ています。このコラムでは、カスハラとは何か、何を準備しどのように対応すべきか、みなさんと一緒に考えたいと思います。

第16回 ケーススタディ「セクハラ行為への対応」(公開日:2026年5月) NEW!

前回は、訪問対応時のカスハラ行為への対応でした。今回は、セクハラ行為への対応について一緒に考えてみましょう。

【ご相談内容】

「40代・男性、店頭セクハラ行為」への対応

最初は名前を聞かれただけでしたが、2回目以降、「結婚はまだなのか」「彼氏はいないのか」「住んでいる場所はどこなのか」「年齢は何歳なのか」「ご飯を一緒に食べに行こう」などと毎回聞いてくるお客さまの対応に悩んでいます。どのように対応すべきでしょうか。

■セクハラ行為はステップ型が多い

これまでに多くのセクハラ相談を受けてきましたが、ステップ型のケースが多く見受けられます。ステップ型とは、最初は軽い質問から始まり、徐々にエスカレートしてセクハラ行為に至るケースを指します。具体的には、最初は名前を聞かれるだけにとどまり、次に下の名前を聞かれ、プライベートな質問に移り、食事の誘い、帰りに待ち伏せされるといった内容です。大事なことは初期の段階で毅然(きぜん)とした態度を取ることです。

業務の範囲内で対応する

初期段階では、寄り添いの姿勢を示したかったという声を伺うこともあります。特に、苦情対応であったり、担当者の対応にミスがあったりした場合などはその傾向が強くなりがちです。寄り添いの姿勢は、業務に関係する範囲にとどめることが重要です。苦情対応は原状回復の原則に沿って行えばよく、業務に関係のない私的な質問には対応する必要はありません。

切り返しのトーク

「名前をフルネームで教えて」と聞かれた場合の切り返しのトークとしては、「恐れ入りますが、業務に関わりがないため、フルネームはお伝えいたしかねます」と伝えます。

このような場面では、個人判断ではなく会社のルールとして伝えることで、対応が組織に基づくものとなり、より安心して対応することができます。「私どもの会社のルールとなっておりますので、ご理解いただけますようお願いいたします」と付け加えると良いでしょう。

今回の事例では、2回目以降もプライベートな質問を受けていますが、同様に返答します。お客さまには、丁寧かつ毅然とした態度で伝えることが大事です。

初期対応でこちらの意図をご理解いただけていないと感じた場合、言葉に出して伝えることの大切さを、意識していただきたいと思います。

組織としての対応

初期段階で、上司などがその場で支援できる状況にある場合は、上司が対応を代わります。今回の相談のように、プライベートな質問に発展しそうになった段階で、必ず上司に報告することが大事です。管理職の人は、業務外の質問があった場合の報告の重要性を、日頃からメンバーに伝えておくようにします。

報告を受けた上司は、お客さまの言葉や行為の記録を対応者に指示します。録音ができていない場合は、録音の準備も指示します。その上で、お客さまから同様の行為があった場合は、上司から注意や警告を行い、組織としての対応方針を示します。

カスハラ対応の基本は、人・場所・時間の変更です。次回来店時には、誰が対応するかの順番も含めて検討しておきます。上司と対応者二人での対応が望ましいですが、それが難しい場合は、本社や本部などの支援組織、警備員への速やかな連携方法や、防犯カメラの準備が必須となります。

警察との連携

注意や警告を行っても行為が続く場合は、カスハラ対応方針やマニュアルに沿って、関係部署と連携のうえ、権限のある担当者が最寄りの警察署の生活安全課に相談します。待ち伏せや繰り返しのつきまとい行為があった場合は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」の対象になる可能性があります。

身の危険がある場合は、組織として対応の中止や出入り禁止措置等も検討します。これは、従業員の安全確保の観点から当然の判断です。

セクハラ対策は義務化されている

セクハラは、カスハラ行為の一つとして、2026年10月に改正法が施行される労働施策総合推進法改正において対策が求められる行為となりますが、すでに男女雇用機会均等法の中で対策が義務化されています。

ポイントとしては3点あります。

  • 相談に適切対応できるよう体制を整備すること
  • 労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
  • 他の事業主から協力を求められた場合、必要な協力を行うよう努めなければならないこと(2020年改正)

最後に

組織としては、女性・男性を問わず、セクハラ行為の報告を受けた場合は、迅速な行動が求められます。迅速な行動をとるためには、それぞれの企業における過去事例をもとに、想定されるケースと対応策をまとめておくことが何より大事です。 今回のケースでは「悩んでいます」との発言がありましたが、1人で悩まず、まずは上司に相談することが重要です。業務中に起こったことは、個人で悩むのではなく、上司に相談し、組織として対応すべきこととアドバイスしました。

・参考として

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第11条「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等」で、

セクハラ防止のための雇用管理上必要な措置を講じる義務を定め、相談を行ったこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないことを規定しています。

さらに、他の事業主から協力を求められた場合に必要な協力を行う努力義務を規定し、相談者保護の強化が図られています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

カスタマーハラスメント対策研修

7月8日【名古屋・半日】カスタマーハラスメント対策研修
8月26日【東京・1日】カスタマーハラスメント対策研修
個別研修
パッケージ
カスタマーハラスメント対策 個別研修パッケージ
お客さま満足の向上に努める中、要求が過剰、不当、理不尽な悪質クレームも発生し、ハラスメントとして応対者の心身にダメージを与える恐れがあります。
この研修パッケージでは、カスタマーハラスメント対策研修、カスタマーハラスメント方針及びマニュアル作成等についての相談、アドバイスをパッケージにしてご提供します。
※年間研修スケジュールはこちら

【厚生労働省】

■労働施策総合推進法の改正(令和7年6月11日公布)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

■顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)について
・カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
・カスタマーハラスメント対策リーフレット
・カスタマーハラスメント啓発ポスター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html#h2_free12

■あかるい職場応援団
カスタマーハラスメントとは
カスタマーハラスメント対策動画(齊木専務理事登壇)

【消費者庁】

・カスタマーハラスメント防止のための消費者向け普及・啓発活動
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/harassment_from_customer

【東京都】

・東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(令和7年4月1日施行)
・カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)令和6年12月19日
・カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル(業界マニュアル作成のための手引)令和7年3月
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/kasuhara_jourei/index.html

書籍:現場責任者のための「悪質クレーム」対応実務ハンドブック

2022年、ACAPに所属する現役お客様対応部門の責任者20名がプロジェクトを結成し、共同執筆しました。各社の豊富な対応経験に裏付けられた実践的なガイドラインです。