カスタマーハラスメント対策特集
ACAPはカスタマーハラスメント対策を考える上で以下3点を前提としています。
- 消費者には「消費者の権利」があり、事業者には「責務」が定められています。
- 多くは善良な消費者であり、事業者にはその声を商品・サービスの改善、開発さらには 経営に活かすことが求められています。
- 事業者としては、初期対応が重要であり、安易にカスタマーハラスメントと決めつけないことが大事です。
一方、不当要求や行き過ぎた行為が行われ、働く環境が害される恐れがある場合、組織としての対応が必要となります。
お客様と従業員とは対等の関係にあります。お客様の尊厳を尊重するとともに、従業員の尊厳を主張することが求められています。
お客様対応は一人で行うことがあっても、難しいお客様に対しては組織で対応します。従業員を決して一人にしてはいけません。そのためにも対応方針を具体的に掲げ、様々なケースを想定した体制づくりが大事です。
このページでは、カスタマーハラスメント対策の取り組み方を正しく知って、働きやすい環境をつくるために支援を行います。
カスタマーハラスメント対策に関するコラム (ACAP専務理事 齊木 茂人)
長時間対応、暴言などカスタマーハラスメント(以下カスハラ)が社会問題となっています。2023年秋に労災認定の基準に、カスハラが追加となりました。厚生労働省では事業者に対してカスハラ対策を措置義務とする動きが出ています。このページでは、カスハラとは何か、何を準備しどのように対応すべきか、みなさんと一緒に考えたいと思います。
第4回 カスハラ発生を未然に防ぐための8つのフロー(公開日:2025年2月) NEW!
カスハラの発生を防ぐためには、難苦情発生時にどう対応するかがポイントとなります。そのための8つの対応フローをお伝えします。発生状況によっては①~⑧の順番が入れ替わることもあります。自社でカスタマイズした対応フローを作成する際の参考としていただければ幸いです。
- 状況の把握
- 「人」「場所」「時間」の変更を検討
- お客様と応対者の距離を置くことを検討
- エスカレーション対応
- 「時系列」での対応記録の作成 組織としての対応方針を定める
- 組織としての対応方針を定める
- 対応を「中止」するか継続するかの判断
- 対応「中止」の判断に必要な「正当な理由」と「努力した姿」
要求内容や話し方などから難しいお客様だと1次応対者が感じた瞬間が大事です。お客様の言葉を復唱し、声を少し大きくすることで、周囲や上司に難しいお客様に応対していることが分かるようにします。この段階で上司はカスハラを未然に防ぐための組織対応の検討に入ります。
まずは、①復唱の内容、応対者の返答内容、応対者の声や顔の表情から状況把握をします。
そのうえで、②応対する人や場所、時間の変更を検討します。難しいお客様への初期対応の鉄則として「人」「場所」「時間」を変えることにより、お客様が落ち着くことがあります。
この点を考慮に入れたうえで、③お客様と1次応対者の距離を置くことを検討します。応対者に精神的な負荷がかかり過ぎないよう考えることが第一ですが、応対者の主体性やプロとしての責任感を尊重したうえで声をかける、電話対応であればメモ出しをします。
1次応対者が納得したうえで、④エスカレーション対応に切り替え、上司と交代します。このときのポイントとして、主導権はあくまで企業側が持つということです。お客様に「上司に代われ」と言われたからといって交代するのではなく、上司に交代するかしないかの判断は企業側で行うことが大事です。電話応対の場合、上司に交代するのではなく、横についてメモを出し組織としての対応方針を伝える方法もあります。
この段階で意識するべきことはお客様に対する窓口は1人という「窓口1本化」の原則です。上司に交代したら1次応対者に担当窓口を戻すことはしません。もちろん応対の流れで営業部門や生産部門などに対応窓口が変わった場合も同様です。
エスカレーション対応後は多くを話さず聴くことに徹し、要求内容や要求行為を具体的に把握したうえで、状況によっては改めての返答とします。具体的要求があり、直ちに返答を強要されたような場合も、即答する必要はありません。
企業としてできることできないことを明確にするための検討に入ります。検討にあたっては、⑤応対した内容を「時系列」で具体的にまとめます。
この時系列での記録を基に、⑥応対部門だけの判断ではなく、必要に応じて営業や品質管理、間接部門など支援部門と協議し組織としての対応方針を定めます。
対応方針とは、⑦対応の「中止」を含めてどこまで何をするかの判断となります。
対応フローの最後にお伝えするのが、「中止」を判断する際のポイントとなります。⑧対応を中止する際には第三者に説明できる「正当な理由」と「努力した姿」の2点が必須となります。言い換えますと、この2点がなければ対応の「中止」をしてはいけないと考えてください。
「正当な理由」と「努力した姿」については次回以降でお伝えいたします。
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- 第3回 カスハラ対策として何を準備するか、対策のポイントは何か(公開日:2024年12月)
- 第3回では、企業がカスハラ対策としてどのような準備をしたらいいか、またその対策のポイントについて考えてみたいと思います。
■カスハラ対策として何を準備しどう対応するか?
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策としては、「事前の準備」と「発生時の対応」が重要です。
まず、事前の準備としては、社内の事例を集める、対応方針の策定、規定等への追加などの「方針」を掲げることと、カスハラの相談窓口の設置、関連部門の支援体制、マニュアルの準備、社内研修などの「体制」を整えることが求められます。
カスハラ対策の方針は従業員に周知するだけでなく、ホームページなどを通じてお客様に公表することが望ましいとされています。店舗や施設の場合は、目立つ場所にポスターなどを掲示するとよいでしょう。
体制としては、社内横断的な相談窓口を設けて担当者を配置します。相談の流れとしては、従業員→現場の上司→相談窓口担当者となります。大事なことは、相談窓口担当者に対して、法務部門や人事部門など関連部門が支援する体制をつくり上げることです。そのほかに準備しておくこととしては、対応フローやQ&Aを含めたマニュアル作りです。さらに研修を行い、知識と実践的対応力を身に付けます。
カスタマーハラスメント対策研修はACAPでも実施しています。集合型研修や個別の企業のご要望に添って出張型で行う事業者相談事業がありますので、ご活用ください。
続いて発生時の対応としては、事実確認、組織対応、記録・録音・録画、時系列での記録作成など「迅速な対応」と、行為を受けた従業員のプライバシー保護や相談者に不利にならない措置などの「フォロー」が必要となります。
■カスハラ対策のポイント
次にカスハラ対策の5つのポイントをお伝えします。
1) お客様対応を行う従業員に安心感を持たせる
2) 対応目安時間を決めてマニュアルに記載する
3) 対応は「中止」だけではなく「中断」の考え方を持つ
4) 刑法を味方につける
5) 「窓口1本化の原則」を常に意識する
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- 第2回 カスハラの判断基準 どこからがカスハラか?(公開日:2024年11月)
- 第2回では、お客様からの苦情やご意見などのお申し出がカスハラに該当するボーダーラインについて考えてみたいと思います。
■カスタマーハラスメントとは
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル*」によると
「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
がカスハラであると考えられるとしています。
要約すると①要求内容と②要求行為により③働く環境が害された場合となります。顧客等からの「著しい迷惑行為」により、就業環境が害されることがポイントといえます。
業種や業態、企業文化の違いにより、顧客等への対応方法・基準が異なることが想定されるため、業界、企業ごとの実態に合わせた対応方針を作成することが望ましいとされています。
■迷惑行為の基準
迷惑行為については、大きく2つに分けることができます。
A. 明らかにカスハラ行為と判断されるもの
B. 個別ケースに応じた判断が必要となるもの
A. 明らかにカスハラ行為と判断されるもの
・不当な要求内容や根拠のない言い掛かり、過度な要求をし続ける場合
・暴力行為やセクハラ行為は法的根拠からも明確な対象と言えます
・「殺す」「火をつける」「SNSでばらまいてやる」などと言われた場合は、威力業務妨害罪や脅迫罪等につながる言葉であり明確な対象となる可能性があります
・「無能」「素人かお前は」「ろくに謝ることもできないのか、人間やめろ」など、個人の人格を攻撃する言葉等を繰り返し発するなどの場合は、侮辱罪や名誉毀損罪に当たる可能性があります
B. 個別ケースに応じた判断が必要となるもの
個別ケースに応じた判断をする際には、客観的にカスハラと判断できる根拠が必要となりますので、それぞれの業界・企業で実態に合わせた具体的な判断基準を作成するとよいでしょう。
*厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
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- 第1回 トピックス&カスハラ対策4つの視点(公開日:2024年10月)
- ■カスハラ対策に関するトピックス
2024年9月現在、労働施策総合推進法改正に伴う「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の中で、カスハラ対策は事業者の取り組みを努力義務としています。現在検討中の東京都の条例案においても同じです。これに対して、厚生労働省は事業者にカスハラ対策を義務づける法改正の検討に入っています。
労働災害の認定として、2023年9月1日「業務による心理的負担評価表」が改正となり、心理的負坦による精神障害の認定基準に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスハラ)が追加となりました。実務的に事業者はカスハラ対策に取り組まざるを得ない状況にあると言えます。
厚生労働省が発表した2023年度の労災補償状況によると、仕事での強いストレスを原因とする精神障害の労災認定は883件に上がりました。このうち「顧客からの著しい迷惑行為」いわゆるカスハラとしては52件が認定されたとしています。
■カスハラに関する責任と義務の視点から考えて、以下4つの視点を持つことが大切です。
A. 事業者は、従業員が安心して働ける環境をつくること
B. 事業者は、従業員が取引先に対してカスハラ行為をしない、させないこと
C. 従業員は、上司に難苦情などを受け付けたことを報告すること、お客様対応に関わる立場としてカスハラ対応を身につけること
D. 従業員は、カスハラ行為をしないこと
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カスタマーハラスメント対策をテーマとしたイベント
ACAPではカスタマーハラスメント対策をテーマとしたイベントを多数開催しています。
これから開催のイベント
開催が決まり次第、お知らせいたします。
開催済みのイベント報告
カスタマーハラスメント対策研修
2024年度のカスタマーハラスメント対策研修は、半日研修の<基礎編>と、1日研修の<実践編>を開催します。
1 月 | |
2 月 | 7日 東京・1日 カスタマーハラスメント対策研修<実践編> |
3 月 |
関連情報リンク
- 顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)について(厚生労働省)
・カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
・カスタマーハラスメント対策リーフレット
・カスタマーハラスメント啓発ポスター - あかるい職場応援団(厚生労働省)
・カスタマーハラスメントを知っていますか?
・カスタマーハラスメント対策動画(齊木専務理事登壇) - 職場でのハラスメント防止を学ぶ カスタマーハラスメント(東京都産業労働局)
書籍:現場責任者のための「悪質クレーム」対応実務ハンドブック
2022年、ACAPに所属する現役お客様対応部門の責任者20名がプロジェクトを結成し、共同執筆しました。各社の豊富な対応経験に裏付けられた実践的なガイドラインです。
