第5回 ACAP定点調査結果から見るカスタマーハラスント対策の現状(公開日:2025年3月)

今回はACAP定点調査結果(※)から自社の立ち位置を知り、何を優先的に行うべきかを見てみましょう。

不当要求や著しい迷惑行為を受けた件数について「受けていない」という回答は6.1%に留まり、多くの企業が引き続き不当要求や著しい迷惑行為を受けていることが示されています。対策としては、72.4%の企業が「エスカレーション対応などの準備ができている」としていますが、カスハラに対する方針の作成(実施中33.8%)や社外に発信(実施中12.0%)を実施している企業は一部に留まり、今後の課題と言えます。

筆者は、研修や講演などでカスタマーハラスメント対策として10項目のチェックポイントをお伝えしてきました。このチェックポイントと今回実施した定点調査の質問項目を同一にしました。これにより自社の対策度合いがACAP全体の中でどの程度進んでいるのか、または遅れているのかが分かります。あくまでACAP会員企業の中での位置付けと捉えていただければと思います。

それでは、質問項目別に実施中と回答の割合(%)をお伝えします。

  • カスタマーハラスメント対応方針を作成している (33.8%)
  • カスタマーハラスメント対応方針を社外に発信している (12.0%)
  • 社内からの相談に対する部署または担当者を設置している (45.3%)
  • カスタマーハラスメント対応マニュアルが作成できている  (34.8%)
  • カスタマーハラスメント対策研修を行っている  (26.2%)
  • エスカレーション対応など発生時の対応の準備ができている (72.4%)
  • 長時間対応の限度となる目安時間を設定している (52.0%)
  • 連携する警察署の電話番号が共有できている (29.4%)
  • カスタマーハラスメントの発生事例を集約し活用できている (26.5%)
  • 心理の専門家による従業員へのメンタルサポート体制がある (43.3%)

まずは各社で項目ごとにチェックをしてみましょう。その上で回答の割合と照らし合わせ、遅れている項目から取組みを開始していただくと良いと思います。半年後、1年後に再度チェックしていただき、対策の進捗度合いを確認することができます。各社で優先順位を決めていただき1年後にはすべての項目が実施できていることが理想です。

方針やマニュアルの作成については作成するだけでなく、その内容が具体的、実践的であり全社で効果的に活用できるものでなければいけませんが、更新を繰り返して充実させていく方法をお勧めします。方針やマニュアルの作成手順やポイントについてもこのコラムで取り上げていきたいと考えています。

※ ACAP「企業における消費者対応体制に関する実態調査」調査報告書(2024年度)、調査期間:2024年7月24日~8月27日、有効回答数:338社・団体

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