第12回 ケーススタディ「激高されている方への対応」(公開日:2025年12月)
- ホーム
- ACAPの取り組み
- カスタマーハラスメント対策特集
- 第12回 ケーススタディ「激高されている方への対応」(公開日:2025年12月)
今回も、これまでにいただいた質問や事例を一緒に考えていきたいと思います。
【ご相談内容】
40代・男性、激高している方への対応について
電話に出るといきなり怒鳴りはじめたお客さまがいました。2日前に受電した応対者の対応が気に入らなかったようです。「お前はバカだ!クズだ!クーズ!」と激高され、内容の詳細も伺いづらい状況で怖くなりました。このように激高された際の対応方法はどうしたらよいでしょうか。

■冷静な対応を行うことが大事
いきなり怒鳴られ、激高された場合であっても、冷静さを失わないことが大事です。詳細を伺わなければいけないと考えると焦ってしまい、冷静になれません。いきなり激高されている方に対しても「限定謝罪」を忘れずに行いますが、詳細を伺うのではなく、聴くに徹することだけを意識するとよいです。「あいづち」を入れながら「話を聴くだけ」、と考えれば冷静になれます。冷静になれれば、激高している背景に目を向けることもできます。
「バカ」「クズ」「クーズ」などの暴言に対しては「バカということでしょうか」「クズですね」と柔らかいトーンを意識しつつ、少し大きめの声で復唱します。復唱をすることで、上長や他のメンバーに、対応が困難なお客さまからの入電だと気づいてもらいます。上長などが横に付いてくれることで安心して対応ができます。途中で説明したいことがあっても、お客さまがすべてを話し終えるまで待ちます。話し終えた後に、再度「限定謝罪」を行い、詳細を伺うようにします。
■人・時間の変更を検討する
相手が激高し、暴言を受けた場合、初期の段階から人・時間を変えることを考えます。大事なマインドとしては一人で頑張りすぎないことです。スキルのある方やベテランの方ほど「大ごとにしたくない」「自分で解決できる」と頑張り過ぎる傾向にあります。責任感を持つことは大事ですが、激高しているお客さまに対して頑張り過ぎる必要はありません。
応対者の変更は、エスカレーション対応となりますが、お客さまに落ち着いてもらうために有効な対応策となります。お客さまではなく1次応対者が主導権を持って変更の判断ができるとよいです。対応者の交代を想定して、お客さまが激高している様子や具体的な発言をメモにします。上長は、復唱などにより対応が困難なお客さまと察知した瞬間、横についてメモを見ながら、いつでも代わることができるという姿勢を1次応対者に伝えます。
時間の変更は、対応の「中断」を指します。時間を置くことにより冷静になっていただくことが狙いです。様々な「中断」の方法があります。「保留」もその一つですが、1分以内を目安に保留の時間をお客さまにお伝えします。電話を一度切って、折り返しの電話とする方法もあります。できる限りお客さまの話が途切れたタイミングをねらいます。激高している時間の長さや程度にもよってはエスカレーション対応としますが、人を代える際も対応を「中断」することになります。交代後も同様の暴言が続く場合は、忠告や警告を行った上で「本日の対応はここまでといたします」として対応を「中断」させます。
■公然性を要件とする「侮辱罪」は成立しにくい
「バカ」「クズ」などの言葉は法律に触れるのか、といったご質問をいただくことがあります。
刑法231条「侮辱罪」や刑法230条「名誉毀損罪」は、第三者が認識できる状況でなければ成立しない「公然性」を要件とする犯罪です。
したがって、1対1の電話で「バカ」「クズ」などと言われた場合には、侮辱罪が成立する可能性は低いといえます。SNSなど多くの人が閲覧できる場で同様の発言を行った場合には、刑事罰の対象となる可能性があります。

「侮辱罪」は「バカ」「クズ」など、具体的な事実に基づかない抽象的な侮辱的表現に対して適用されます。一方「名誉毀損罪」は、「この会社は詐欺をしている」「担当者が不正を行った」など、具体的な事実(真偽は問わない)を示して発言し、その結果として相手の社会的評価を低下させる場合に成立します。
電話で激高され「バカ」「クズ」などの言葉を浴びせられ、精神的苦痛を受けた場合には、民法709条の不法行為として慰謝料請求が認められる可能性があります。この場合には、侮辱罪などと異なり、公然性は要件とされません。
お客さまに対して「刑法第○条に抵触します」といった法律用語を用いて説明する必要はありません。しかしながら、お客様の発言や行動がどのような法律に関わる可能性があるかを知っておくことは大切です。法的な仕組みを理解しておくことで、より毅然と、かつ冷静に対応することができます。
■最後に
多くの苦情は商品やサービス、会社に対してのことです。応対内容に対して非難されたとしても組織の方針として打ち出した回答についての苦情です。激高されているお客さまの場合、お客さまの申し出を自分ごととして捉えるのではなく、自分自身を第三者的な立場として捉えることが大事です。この考え方を持つことにより冷静になることができます。心の中で「お客相談室は舞台であって、応対者は役者となって演技すればよい」といった気持ちを持つと冷静になれます。
最後までお読みいただきありがとうございました。

