第15回 ケーススタディ「訪問対応時のカスハラ行為への対応」(公開日:2026年3月)

前回は暴力行為への対応でした。今回は、お客さまのご自宅に訪問対応時のカスハラ行為への対応についてです。場面を想定し、営業課長を支援するお客様相談室長の立場で考えてみましょう。

【ご相談内容】

60代・男性、訪問対応時のカスハラ行為への対応

お客さまから商品苦情が電話で入りました。応対者が電話に出るといきなり、「おまえのところはどういう商品管理をしているんだ!先日買った商品に異物が入っていた。今日、引き取りに来い!!夜8時まで仕事をしているから9時半以降にしてくれ!」応対者は「お引き取り日と時間については、改めて担当者から相談させていただきます」とお伝えし、営業課長に連携しました。

お客様相談室長としては、対応に慣れた営業課長が担当するので大丈夫だろうと捉えていました。ところが当日の夜11時半、そろそろ寝ようと横になったときです。携帯が鳴りました。着信の名前を見ると、営業課長からです。押し殺したような小声で「2時間ほどお客さまの家にいます。帰れない状態です。今、お客さまが席を外したので電話しています。どうしましょう」

さて、あなたならお客さまのご自宅内で対応に当たっている営業課長にどのような指示を出しますか。 実際にどのような指示を出し、どのような顛末(てんまつ)に至ったか、対応のポイントや反省点も含めてお話しします。

■お客様相談室長(以下、「室長」)からの指示

すぐさま状況は察知できました。室長からは、「お客さまが戻ってきたらすぐさま『今、会社から指示がありました。遅い時間までお客さまにご迷惑をかけているので、すぐに帰れと指示されました。失礼します』とだけ伝えて、後ろを振り向かずに帰るように。家を出たら電話をください」と伝えました。

顛末

お客さまが席に戻った瞬間、営業課長は、指示通りに話し、後ろを振り向かずに家から出ることができました。室長は、電話連絡が入った後、「遅い時間で申し訳ないけど、このまますぐに近くの警察署に行って、状況だけ伝えて」と依頼しました。翌日、お客さまから苦情の連絡が入ることはなく、その後、異物混入の調査報告や代替品の送付など無事に終えることができました。

指示した内容のポイント

  • 退去は、会社の指示であることを示す
    営業課長の意思でも、室長からの指示でもなく、会社の指示であることを示します。この伝え方により、あとから営業課長が責められることを避け、お客さまの目を会社に向けさせることができます。
  • 後ろを振り向かない
    会社の指示と言っても、引き止めや何らかの暴言などが出ることもあります。最悪、暴行を受ける可能性もあります。お客さまが戻って来て顔が見えた瞬間、多少でも物理的距離がある状況で伝えることが、身を守るために大事です。また、後ろを振り向くとお客さまと目が合い、話を聞かざるを得ない状況に戻される可能性があります。
  • 家を出たら連絡をもらう
    連絡をもらうことで退去できた確認ができます。また状況を聞いたうえで警察へ連携するべきかどうかを判断します。営業課長は3回~4回にわたり退去を申し出たそうですが、引き止められ、ときには大きな声で叱責を受け続けたようです。お客さまとの会話内容や、深夜にわたり約2時間拘束されていた状況を踏まえ、その足で警察署に向かってもらいました。被害届ではなく、発生事実と今後何かあった場合にはご相談させてもらう旨を、生活安全課の担当者に伝えてもらいました。

この事例の反省点

  • 訪問の目的と対応の目安時間を決めていなかったこと
    訪問の目的は、異物の預かりとお詫びです。この2つの目的を終えれば後は速やかに退去すべきでした。また、この対応にかける時間は10分~20分、長くても30分あれば十分です。
  • 組織として、営業課長への支援ができていなかったこと
    対応が難しいお客さまに対しては、組織として訪問対応時にも支援を行います。訪問開始前と終了直後に営業課長から室長に電話を入れてもらう依頼をしておくべきでした。訪問後、30分が経過して連絡がなければ室長から営業課長の携帯に連絡を入れて退去するきっかけをつくることができます。この支援の仕方は効果的であり訪問対応者の安心につながります。難しい案件はそれほど多く発生することはありませんが、今回の事例では、入電時のお客さまの言動と遅い時間の訪問であったことから、そのような準備をしておくべきでした。
  • 家の中に上がってしまったこと
    自宅訪問の場合、玄関先での対応が原則となります。やむを得ず家の室内に入り確認が必要な場合も確認を終えたら、玄関先に戻っての対応とすべきです。室内に入ると時間が長くなるのに加えて、退路を妨害されてしまう可能性もあります。ご自宅はお客さまの陣地とも言えます。お客さまが主導権を握った対応となってしまう恐れがあります。さらに、和室の場合は正座をしての対応の可能性があり、とっさに動けないリスクもあります。
  • 営業課長が1人で訪問したこと
    初期対応の中で、厳しい要求内容や行き過ぎた行為があった場合、訪問対応は2人での対応が基本となります。2人で訪問することは、担当者の安心感だけでなく、脅迫や暴行など最悪の事態を想定した危機管理にもつながります。その際、「窓口1本化」の原則に従い1人は窓口もう1人はメモ担当となります。メモを取っていることをお客さまに示すことにより、お客さまに冷静な言動を求めることにつながります。

最後までお読みいただきありがとうございました。