カスタマーハラスメント対策特集

ACAPはカスタマーハラスメント対策を考える上で以下3点を前提としています。

  1. 消費者には「消費者の権利」があり、事業者には「責務」が定められています。
  2. 多くは善良な消費者であり、事業者にはその声を商品・サービスの改善、開発さらには 経営に活かすことが求められています。
  3. 事業者としては、初期対応が重要であり、安易にカスタマーハラスメントと決めつけないことが大事です。

一方、不当要求や行き過ぎた行為が行われ、働く環境が害される恐れがある場合、組織としての対応が必要となります。
お客様と従業員とは対等の関係にあります。お客様の尊厳を尊重するとともに、従業員の尊厳を主張することが求められています。
お客様対応は一人で行うことがあっても、難しいお客様に対しては組織で対応します。従業員を決して一人にしてはいけません。そのためにも対応方針を具体的に掲げ、様々なケースを想定した体制づくりが大事です。
このページでは、カスタマーハラスメント対策の取り組み方を正しく知って、働きやすい環境をつくるために支援を行います。

カスタマーハラスメント対策に関するコラム (ACAP専務理事 齊木 茂人) 

長時間対応、暴言などカスタマーハラスメント(以下カスハラ)が社会問題となっています。2023年秋に労災認定の基準に、カスハラが追加となりました。厚生労働省では事業者に対してカスハラ対策を措置義務とする動きが出ています。このコラムでは、カスハラとは何か、何を準備しどのように対応すべきか、みなさんと一緒に考えたいと思います。

第6回 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の要点解説(公開日:2025年4月) NEW!

第6回では2025年4月1日施行となった東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(条例)の要点について見てみましょう。

東京都は、条例、カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)、カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル(共通マニュアル)の関係性を体系図に示しています。(図1)共通マニュアルを各団体が活用することにより、中小企業における取り組み支援にもつなげる考えに立っています。

条例では、「顧客等の権利を不当に侵害しないように留意」(第5条)した上で、「顧客等と就業者とが対等の立場において相互に尊重する」(第3条2項)ことの重要性を示し、東京都、顧客等や就業者、事業者の責務を個別に明らかにしています。就業者の定義としては、公務員やボランティアなどまで広く対象とした点が特徴的と言えます。

消費者の権利については、当コラムにおいてもカスタマー・ハラスメントを正しく理解するために重要であることをお伝えしていますが、ガイドラインの中においても消費者基本法第2条に定める消費者の権利を具体的に示しています(ガイドライン12ページ、【参考】消費者の権利と責任、事業者の責務)。

ここでは、押さえておきたい条例のポイントをお伝えします。

■カスタマー・ハラスメントの定義を明確にした

条例第2条5号「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう」と定義を定めました。

この定義の中で、「著しい迷惑行為」については、条例第2条4号で「暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう」と規定しています。

また、ガイドラインにおいては、「就業環境を害するもの」について触れていますが、
「顧客等の要求内容に妥当性がないと考えられる場合でも、就業者が要求を拒否した際にすぐに顧客等が要求を取り下げた場合、就業環境が害されたとは言えない可能性がある」とし、安易にカスハラと決めつけないことも示しています(ガイドライン3ページ、第2 カスタマー・ハラスメントの内容に関する事項 2 カスタマー・ハラスメントの定義(2)「就業規則を害する」の考え方)。
「就業環境を害する」ことが伴ってはじめて、カスタマー・ハラスメントと定義されるという点が重要です。

■行為者に対する罰則規定は設けていない

条例第4条の見出しを「カスタマー・ハラスメントの禁止」とした上で、「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない」と規定しています。

罰則については設けていませんが、ガイドラインの中で、「当該禁止規定に違反した場合の罰則規定はないが、行為の内容によっては、この条例にかかわらず、法律に基づく処罰等を受ける可能性がある」とし、刑法等による処罰の対象となる可能性や、民法の不法行為責任に基づく損害賠償請求権などが発生する可能性について触れています(ガイドライン1ページ、第2 カスタマー・ハラスメントの内容に関する事項 1 カスタマー・ハラスメントの禁止(2)禁止の法的効果)。

■事業者が取るべき措置は義務ではなく努力義務に留めている

条例第9条2項で「事業者は、その事業に関して就業者がカスタマー・ハラスメントを受けた場合には、速やかに就業者の安全を確保するとともに、当該行為を行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない」としています。「努めなければならない」という文言を用いて努力義務に留めています。

事業者が努力義務として行うべきことは、ガイドラインの「第5 事業者の取組に関する事項」において、方針の明確と周知、相談窓口の設置、初期対応の方法や手順の作成、就業者への教育・研修等などを具体的に示しています(ガイドライン18~36ページ)。

現時点(2025年4月)では厚生労働省の考え方に合わせたものとしていますが、2025年度に国が措置義務とした場合には文言を改めることが考えられます。

■就業者としてもカスタマー・ハラスメント行為をしないことを記載

条例第9条3項で「事業者は、その事業に関して就業者が顧客等としてカスタマー・ハラスメントを行わないように、必要な措置を講ずるよう努めなければならない」としています。

ガイドラインでは、取引先との関係においてもカスタマー・ハラスメントを行わないよう、防止に関する啓発や教育等を行っていくことを求めています(ガイドライン17ページ、第3 顧客等、就業者および事業者の責務に関する事項 3 事業者の責務(5)「就業者が顧客等としてカスタマー・ハラスメントを行わない」の考え方)。

【ご参考】
*東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(令和7年4月1日施行)
*カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)令和6年12月19日
*カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル(業界マニュアル作成のための手引)令和7年3月
*カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル(概要版)
*カスタマー・ハラスメント対策マニュアル(ひな形)

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カスタマーハラスメント対策をテーマとしたイベント

ACAPではカスタマーハラスメント対策をテーマとしたイベントを多数開催しています。

これから開催のイベント

開催が決まり次第、お知らせいたします。

開催済みのイベント報告

カスタマーハラスメント対策研修

2025年度のカスタマーハラスメント対策研修は、半日研修の<基礎編>と、1日研修の<実践編>を開催します。

8月27日 カスタマーハラスメント対策研修<実践編>
2月○日 カスタマーハラスメント対策研修<実践編>

※年間研修スケジュールはこちら

書籍:現場責任者のための「悪質クレーム」対応実務ハンドブック

2022年、ACAPに所属する現役お客様対応部門の責任者20名がプロジェクトを結成し、共同執筆しました。各社の豊富な対応経験に裏付けられた実践的なガイドラインです。

「悪質クレーム」対応実務ハンドブック